急性アルコール中毒防止のための若年者向け適正飲酒プログラムの開発および効果評価を目的として、若年者(大学生等)向けの飲酒プログラムのレビュー、若年者がイッキ飲みに至る社会的、個人的要因を明らかにするための小規模な疫学調査、プログラムの試作・試行、等を実施した。 1.若年者向けの既存の飲酒に対する介入方法として、Harvard University School of Public Healthにおいて実施されたCollege Alcohol Study(CAS)などを参考に検討した。CASでは、大学キャンパス内や近隣における飲酒関連ポリシーの厳格化(例;学生寮での飲酒禁止、近隣居酒屋での飲み放題提供の禁止)などが中心であり、基本的には本プログラムの趣旨には合いにくいものであった。 2.大学生を対象に若年者がイッキ飲みに至る要因を明らかにするための疫学調査を実施した。調査前に大学生・大学院生を対象に要因の絞り込みを行うためにインタビューを実施したが、外部要因として「部活の(後輩に飲ませる)先輩」が挙げられるなど、本人への介入だけでは対処しにくい点もあった。調査結果として、これまで研究者らが対象としてきた中高年男性とは大きく異なる特性が明らかとなった。特に、中高年男性においては、飲酒量などの面において周囲から問題飲酒の予備群であろうと指摘を受ける当該対象者自身に、いくらかでも自身の飲酒を改善したい、改善しようという認識があったのに対し、若年者においては、本プログラムが対象とするような危険な飲酒の予備群(binge drinkingのあるもの、など)と考えられる対象者には、そもそも飲酒を改善したいとの認識が少なかった。 3.したがって、中高年男性に対するプログラムでは飲酒のプラス面に焦点をあてることで希望による対象者募集が可能であったが、若年者に対するプログラムでは、募集することが容易ではなく、プログラムの試作に基づき、試行を実施したが、CASのような強制的な方法との併用により提供する必要性もあると考えられた。
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