1.背景 我々は全国45施設から収集された約70万件の健康診断データを統合し、24の検査項目において男女別・年齢5歳刻みの基準範囲を算出した。ほとんどの検査項目において基準範囲が算出できたが、極端に偏った分布を示す検査項目では他のアプローチが必要であることが示唆されていた。 2.目的 男女別・5歳刻み基準範囲を算出する際に用いた非線形最適化法における正常者集団の分布は正規分布するという仮説の妥当性を検証するとともに、極端に偏った分布を示す検査項目(CRP)における基準範囲を算出するための分布形の検証を行った。 3.成果 正常者集団は中心復元力を有するという仮設を立て、一様乱数を始点としてランダムウォークによる変動と中心復元力を組み合わせたネガティブフィードバック現象をシミュレートした。ランダムウォークでは正規乱数を用いたが、その幅を変動させ、中心復元力のパラメータも複数用い、10パターンでシミュレートしたが、いずれも分布形が正規分布となって安定した。 極端に偏った分布を示す項目については、高感度CRPで測定された施設の検査値を用いて、各種変数変換・分布のあてはめを行った結果、ワイブル確率紙上でCRP低地領域において線形部分が見い出され、正常者のCRPはワイブル分布に従う可能性が示唆された。ワイブル確率紙上の線形部分のヒストグラムに対して非線形最適化法を適用することで、正常者のCRP分布(ワイブル分布)を推定することで、基準範囲を算出することができる可能性が示唆された。 一方、男女別・年齢5歳ごとに各検査値の相関係数を計算し、男女別・年齢5歳刻み異常率に関してはhttp://www.mi-tokai.comにて公開している。 また、健康問題が危惧されている沖縄県の分析に関しては、炎症性反応を示す高感度CRPにおいても男女別年齢ごとに比較したところ、全国よりも高い傾向にあることがわかった。
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