私どもは、世界7カ国共同研究の一環として昭和33年(1958年)より40年以上にわたり福岡県田主丸町において経年的に一般住民検診を行ってきた。また、平成14年より長崎県宇久町で一般住民検診を毎年行っており、平成16年度にアルドステロンを約200名に測定した。 アルドステロンは、左室および血管リモデリングと密接な関連があると言われており、血管・心筋繊維症などとの関連が示唆されている。しかしながら、本邦では、血清アルドステロンに関する疫学的データがないため、その分布、男女差などの基本的特性もわかっていない。従って本研究では、まず多人数のデータを用いてこの点を明らかにすることから始めなければならない。もし、アルドステロンが血管内皮機能障害の指標となるのなら、健常者のデータを基に、ある値以上の異常値を示すものに対して、高血圧、心肥大などの予防策を講じることが可能になる。さらに、早めにアルドステロン拮抗薬を用いた治療を開始する閾値を知ることができれば、今後の診断、治療に大いに貢献することができ、研究はさらに発展していくと考えられる。アルドステロンにおける基礎的な疫学的検討から治療、創薬に至るまで総合的に探求することが本研究の目的である。 平成17年度も7月下旬に長崎県宇久町で年一回の住民検診を行った。40歳以上の男女を対象として約200名の住民が受診し、検診内容は身体測定、栄養調査、血圧測定、血液検査(血計・一般生化学検査のほか糖・脂質代謝・高感度CRP、fibrinogen、Plasminogen activator inhibitor-1 [PAI-1]、アルドステロンなど)、心電図、心・頚動脈エコーなどの検査を施行した。全てのデータを入力し、肥満度・総皮脂厚といった身体変量、糖・脂質代謝、fibrinogen・PAI-1といった血栓マーカー、心エコー図における左室壁厚とアルドステロン値との関連を解析する予定である。 また、急性心筋梗塞や心不全、高血圧といった疾患と血清アルドステロン値との関連に関しても、現在血清を収集、保存中であり、次年度に測定、解析を行う予定である。
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