過食を防ぎ体脂肪の増加を抑えることは、主に生活習慣病の一因となる肥満の予防と治療に重要である。近年、カツオやマグロ等の赤身魚や多獲性赤身魚のタンパク質に多く含まれるヒスチジンの抗肥満作用が注目されている。その理由として、ヒスチジンの誘導体であるヒスタミンが視床下部においてヒスタミンニューロンを刺激して摂食量を抑制することがあげられる。神経ヒスタミンの生理機能については摂食量の抑制、エネルギー消費の亢進に加え、体脂肪分解作用を介して肥満発症に抑制的に働くことが報告されている。 本研究は、神奈川県の女子大学生を対象として、ヒスチジン摂取による体脂肪減少効果について身体計測と食事調査を行い、肥満の指標となる体脂肪率、体脂肪量、およびBMIと体重当たりタンパク質摂取量当たりのヒスチジン摂取量との相関を確認する。また、日常の食事の中で摂取可能なヒスチジン供給源を経口摂取試験により付加したときの体脂肪蓄積抑制作用に着目し、検証を行うものとした。 女子学生のヒスチジン摂取量と体脂肪蓄積抑制作用の関係を明らかにするため、身体状況調査、食事調査、食生活状況調査の実施に加え、ヒスチジンを多く含むカツオ熱水抽出物(bonito extract;以下BE)の経口摂取試験を6週間実施し、BEの摂取前後の血中のヒスチジン濃度、血中脂質等生化学的検査の測定を行い、摂食抑制、体脂肪蓄積抑制効果について検討した。 その結果BE摂取後の体脂肪測定値は、体脂肪率、特に体幹部でBE摂取前に比べ有意に低下した。食事調査結果ではエネルギー摂取量が減少し、炭水化物摂取量が有意に減少した。また、エネルギー摂取量とタンパク質摂取量当たりのヒスチジン摂取量は、有意な負の相関関係が認められた。BEの摂取前後の血液検査の結果では、血糖値の有意な低下がみられた。さらに、レプチンは有意に低下し、アディポネプチンは有意に増加した。
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