研究概要 |
平成18年度は質問紙法による調査研究を中心に実施した.まず,昨年度作成したコーピングに関する知識を問う質問票を警備会社に勤務する警備員55名に実施し,各質問項目に対する正答率を算出した.その結果,モデリングの方法に関する質問や,認知の歪みに関する質問などでは正答率が60%程度であり,適度な難易度であると考えられた.一方,「ストレス対処の対象とするストレッサーを明確にする」などの質問では正答率が90%程度と高く,質問文の難易度をより高める必要性があると考えられた.次に,昨年度邦訳したコーピング尺度について,信頼性・妥当性の検討を行った.中学校・高校の教員1,000名を対象に調査を実施し,344名から回答が得られた.信頼性は,α信頼性係数によって検討した.その結果,値の範囲は0.40-0.90であった.一部,α信頼性係数の値が低い下位尺度が認められたが,その値は原版のα信頼性係数の値と同程度であった.妥当性については,既存のコーピング測定尺度であるCoping Inventory for Stressful Situations日本語版(古川ら,1993)との基準関連妥当性,および,Rosenbergのセルフエスティーム尺度日本語版(山本ら,1982),Carver et al.(1989)のコントロール感尺度との構成概念妥当性の2点から検討した.分析の結果,いずれの尺度とも予想される有意な相関係数の値が得られた.なお,日本語版と英語版の違いによる回答の不一致がないかを検討したところ,各下位尺度の得点に有意な差は認められなかった.本年度にこれらの質問紙が作成されたことから,次年度に実施されるコーピング教育研究の効果評価に使用できる準備が整った.
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