平成19年度は職場集団を対象にストレスコーピング教育研修を行い、コーピングに関する知識の向上、ストレス反応の低下等を指標としてその効果を検討することを目的とした。前年度までに作成されたコーピングに関する知識を問う質問票とコーピング尺度(CopingOrientation to Problems Experienced Questionnaire : COPE)、および、職業性ストレス簡易調査票のストレッサー尺度、ストレス反応尺度、ソーシャルサポート尺度、満足感尺度を使用した。ストレスコーピング教育研修前のプリテストでは、これらの質問紙を全対象者に実施した。研修では講義形式でコーピングに関する知識を教育するのみの群と、講義に加えてコーピングの修正方法に関する実技指導を行った群の2群を設定し、受講者を無作為に割り当てた。フォローアップのための質問紙調査は、研修実施直後、および、研修終74ケ月後にそれぞれ実施した。群および調査時期を要因とする繰り返しのある二要因配置分散分析を行った結果、群と調査時期の交互作用はどの指標においても有意ではなかった。一方、調査時期の主効果が認められ、研修を受講することによって、「認知の歪みの特徴を知る」、「日常的にストレスや健康を管理する」、「モデリングの方法を理解する」などのコーピングの知識面が研修実施直後に有意に高まることが明らかになった。ただし、これらの知識については4ケ月後には研修実施前の水準にまで回帰しており、知識を持続させるためには、継続的なコーピング研修の実施が必要であると考えられた。
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