隣接する細胞間の情報伝達を担うGap junction(GJ)とその前駆体で細胞内外の低分子物質の授受を行うHemi-channel(HC)は、心筋において不整脈の発生や心筋傷害に関与していると考えられている。私は虚血による不整脈の発生や心筋傷害の関与のメカニズムを解明するために、今回、特に虚血におけるHCの活性の変化とその生理的意義として虚血再灌流傷害への関与について調べた。虚血心筋のモデルとして、心筋初代培養細胞をOxygen-Glucose deprivation(OGD)に曝露し、心筋HCの主要構成タンパク質であるコネキシン43(Cx43)の発現量、HC活性(HCの開閉による低分子物質の授受)、細胞内カルシウム濃度、細胞傷害等を解析した。その結果、以下のような新知見を得た。 1.OGDによってCx43量の増加とHCの活性化が1時間をピークに一過性に起こる。 2.OGDによる細胞内カルシウム濃度の上昇はHCの活性化が起こる30分頃から始まり、2時間には1μM以上となるが、HCの開口はこの細胞内カルシウム濃度上昇のトリガーとなっている。 3.OGD30分のHC開口によって引き起こされたカルシウムのオーバーロードは、OGD1時間以降HCの閉口をもたらし、HC活性はOGD2時間にはベースに戻る。 4.虚血再灌流傷害のモデルとして、HCが開口しているOGD1時間に細胞を通常の培養液に戻すと、約50%の細胞が傷害された。しかし、OGDの際にHC特異的ブロッカーペプチド(Gap26)を加えると細胞傷害が抑制された。このことは虚血再灌流傷害おけるHCの関与を示唆している。 以上のように本研究は、虚血によるHC活性化が一過性であることのメカニズムを解明し、HCの開口がカルシウムオーバーロードを引き起こし、虚血再灌流傷害に関与していることを明らかにした。
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