昨年に引き続き、ラット肝動脈および上腸間膜動脈の輪状標本モデルを作成し、フェニレフリン収縮下において、NDHF候補因子であるアナンダミドのdose-response relaxation curveを作成し、アナンダミドによる血管弛緩反応に対する種々の薬物およびエタノールの影響を検討した。 両血管において、対照群ではアナンダミド濃度が上昇するにつれて弛緩率は増大した。肝動脈においては、CGRP (calcitonin-gene related peptide) receptor antagonist (CGRP[8-37])やVRI receptor antagonist (capsazepine、ruthenium red)および、K+ channel blocker (iberiotoxin)の存在によって弛緩率が有意に抑制されたが、上腸間膜動脈においては、CGRP receptor antagonist (CGRP[8-37]とVRI receptor antagonist (capsazepine、ruthenium red)では弛緩率が有意に抑制されたものの、K+ channel blocker (iberiotoxin)による影響は見られなかった。 これらの結果から、肝動脈ではアナンダミドがVR1を活性化することによってCGRPによる弛緩反応を引き起こす経路、アナンダミド自身がNDHFとしてK+ channelを活性化し、過分極による弛緩反応を引き起こす経路の2つのpathwayの存在が示唆された。一方、上腸間膜動脈では、アナンダミドがVR1を活性化することによってCGRPによる弛緩反応を引き起こす経路がメインに機能していることが示唆された。 また、両血管において、低濃度(50mM)・中等度(100mM)のいずれのエタノール濃度においてもアナンダミドによる弛緩反応を有意に抑制した。 以上のことから、ラット肝動脈および上腸間膜動脈におけるアナンダミドによる弛緩反応のいずれかの部分においてエタノールは抑制的に作用することが明らかになった。作用部位については今後詳細を検討していく必要がある。
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