研究概要 |
【緒言】 法医学領域における乳幼児突然死例では通常の法医解剖および諸検査のみでは、死因の決定に際し苦慮することが多い。とりわけ、乳幼児突然死症候群(SIDS)は社会的な問題として注目されている。一方で臨床医学の分野ではプロスタノイドなどの生理活性物質と各種疾患の病態との関連が研究され、報告されている。そこで今回、プロスタノイド分析を行い、死因との関連性を明らかにすることを試みた。 【材料および方法】 東京慈恵会医科大学法医学講座において実施された法医剖検例より、乳幼児の剖検例を選び、ガスクロマトグラフ質量分析装置を用いて、プロスタノイド一斉分析を行い、データを集めている。なお、測定したプロスタノイドはトロンボキサンチンB2(TXB2)、6-keto PGF1α、PGE1、PGE2、PGF2α、8-epi PGF2αおよびPGD2の代謝物である9α,11β-PGF2の8種類である。 【現時点での結果報告】 対象群として死亡原因が明らかでない乳幼児突然死例を、コントロール群として、死亡原因の明らかな乳幼児の剖検例(外因死あるいは内因死例)を選び、分析を行った。各剖検例から剖検時に採取し、-80℃で保存しておいた血漿について一斉分析を行った結果、ほとんどのプロスタノイドについて分析値を得ることができた。しかしながら、PGE1、PGE2などで検出不能な試料もみられた。対象群が少ない(現在3例)ので、現段階での各プロスタノイド値の傾向についての評価は難しいが、次年度も引き続き、対象となる剖検例を集め分析することで、総合的な検討を行い、法医学領域でのプロスタノイド分析の意義や有用性について明らかにしていきたい。
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