研究概要 |
死体血漿中プロスタグランジン類及びトロンボキサン類(PGs)と病態、特に乳幼児突然死症候群(SIDS)との関連を明らかにすることを目的とし、ヒトの死体血漿中PGs分析値の信頼性および心臓性突然死剖検例、SIDS例のPGs値の傾向について検討した。 当講座で実施された法医剖検例85例について、剖検時に採取した血漿中の8種類のPGs(TXA_2の代謝物であるTXB_2、PGI_2の代謝物である6-keto PGF_1α、PGE_1、PGE_2、PGF_2α、8-epi PGF_2αおよびPGD_2の代謝物である9α,11β-PGF_2)をガスクロマトグラフ質量分析装置で一斉分析した。 分析の結果、ほとんどの試料からPGs値を得られ、血漿試料中の各PGs値は死後経過時間および年齢との間に相関はなかった。内因死例を心臓性突然死群と対照群に分類し、TXB_2と6-keto PGF_1α値を比較した結果、心臓性突然死群では67%で6-keto PGF_1α<TXB_2となり、TXB_2が若干増加し、6-keto PGF_1αが大幅に減少していることが明らかとなった。特に6-keto PGF_1αの減少が顕著であることから、PGI_2の産生量が減少していると考えられた。 85例のうち乳幼児突然死例12例についても、死体血漿中の各PGs値と死後経過時間(7-41時間)、および年齢(0.17-3歳)との間に相関は認められなかった。死因は呼吸器系疾患(主に肺炎)5例、窒息2例、SIDS1例、不明4例であった。死因毎にTXB_2と6-keto PGF_1α値について検討したところ、6-keto PGF_1αにおいて呼吸器系疾患例に比べ、窒息例では値がやや高く、SIDS例では顕著に高かった。しかしながらSIDS例は1例のみと症例数が少なかったことからSIDS例の特徴と断定するには至らなかった。今後もSIDS症例を集め検討を重ねたい。
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