研究課題
がん患者は、たとえ原発巣が完全に除去できて、いわゆる完全緩解を得てからでも、再発に対する不安感が常に付きまとい、うつ状態になりがちである。そのようなことから、乳がん患者は大きなストレスになっている。アロマセラピーの効果の1つとして、ストレス軽減効果があげられる。また、不安感やうつ状態の改善にも効果がある。そこで、本研究では、14名の被験者でアロマセラピーを行うことにより、乳がん患者の再発に対する不安感の軽減効果、うつ状態の改善を検討した。対象被験者は、京都府立医科大学乳腺外科外来において術後フォローアップ中の乳がん患者であった。HADSでは、マッサージ開始前のスコアで、抑うつ尺度は平均9.15点、不安尺度7.23点、合計16.38点とやや高く、マッサージ開始前は、全員不安度やうつ状態が少し高い目の状態にあった。また、アロマセラピーマッサージを行うことによって、前と後あるいは前と8回目前の間で、抑うつ尺度の有意な変化はみられなかったが、不安尺度は有意に低下した。全体として合計スコアは、不安尺度と同様に、前と後あるいは前と8回目前の間で、有意な変化がみられた。STAIは、状態不安について各セッションの直前、直後で有意な不安度軽減がみられた。しかし、1回目直前と8回目直前の間での変化はみられなかった。QRは、心理面だけでなく、身体面でのリラクセーションの効果を評価できる特徴がある。これについても、STAIの状態不安と同様、アロマセラピーマッサージの前後においてスコアが減少したが、1回目と8回目の問の長期の変化はみられなかった。POMSについては、疲労および怒り-敵意の項目において、1回目と8回目の間に有意差が認められた。免疫学的変化については、CD16陽性細胞が、1回目前と8回目前に有意に減少した。CD16陽性細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞の一部を表しており、アロマセラピーによりむしろ減少したことは、生体にとって不利なことを意味しているかもしれない。また、1回目前と8回目の前で、CCR4細胞の有意な増加がみられた。これは、Th2細胞の増加を意味しているが、腫瘍免疫の観点から、どのように解釈するかは困難である。その他の免疫能の指標については、アロマセラピーマッサージ前後で有意差は認められなかった。また、生理学的機能についても、有意な変化はみられなかった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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