劇症1型糖尿病調査委員会に参加している施設と全国の新規発症1型糖尿病を対象にして質問票を依頼した結果、複数の施設から98症例についての回答をえた。しかしながら、回答が不十分な症例もあったため、その施設に電話や手紙などで再度データーの収集を試みた。インスリン療法開始前やインスリン療法開始1カ月以内に血液生化学検査が施行されていない例がおおかった。また飲酒歴や肝炎ウイルスの有無についても問い合わせ、他の肝疾患の可能性が考えられる症例は除いた。最終的に劇症1型糖尿病例53名とその対象として年齢と性別をマッチさせた非劇症1型糖尿病55名での肝障害についての分析を行った。肝障害を有する症例は劇症1型糖尿病では治療開始時に高血糖(p<0.005)、高中性脂肪血症(p<0.01)を認めた。非劇症1型糖尿病ではHbAlc高値(p<0.05)、高中性脂肪血症(p<0.05)、インスリン使用量が多かった(p<0.05)。劇症1型では非劇症1型糖尿病に比べケトアシドーシス治療中に肝障害を併発するリスクが3.7倍と高かった。また前者では34%、後者では50%にエコーまたはCT上で脂肪肝を合併していた。脂肪肝を有する症例では65%で肝酵素が上昇し、AST/ALTはケトアシドーシス発症時には1.01、10から30日後には0.73とALTがより明らかに上昇し、脂肪肝のパターンであった。ケトアシドーシス時に肝酵素が上昇する機序は脱水や使用する薬剤(抗生剤)による副作用、グリコーゲンの沈着が主たる原因とされてきたが、今回の調査で肝臓への脂肪沈着による可能性も考慮しなければいけないことがわかった。以上のことをふまえ、現在の段階で論文執筆中である。(717字)
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