【平成17年度の研究状況】 1.日本人染色体5q31(IBD5ハプロタイプ)領域の多型の決定 日本人クローン病症例および健常対照者のDNA sampleを用いて、IBD5ハプロタイプ領域をシークエンスし、この領域の日本人固有の多型を明らかにした。このさい、我々の研究と前後して報告された、日本人関節リウマチを対象とした5q31の解析情報(Tokuhiroら)を参考にし、効率よく解析を行った。連鎖不平衡解析の結果、日本人IBD5領域に存在する38個の多型のうち12個を解析対象マーカーとして選出した。 2.日本人炎症性腸疾患に対する相関解析 現在までのところ、クローン病患者241例、潰瘍性大腸炎患者247例、健常対照者270例に対して、上記マーカーのタイピングを終了した。相関解析および臨床病理病型別相関解析の結果、すべての多型はクローン病および潰瘍性大腸炎に感受性をしめさなかった。以上より、IBD5のクローン病感受性は白人と日本人で異なり、多因子疾患の疾患感受性遺伝因子が人種間で異なることを具体的に示す証拠の一つとなった。 3.白人クローン病感受性OCTN多型の解析 白人ではIBD5クローン病感受性の本体がOCTN1/OCTN2遺伝子のL503F/-207GC多型であることが示されているため、この多型についても日本人を対象に解析を行った。その結果、日本人にはこの多型が存在しなかった。これが、日本人でIBD5の感受性がない直接的な原因と推測される。 ※以上の結果はすでに論文にまとめ掲載されている(Scand J Gastroenterology 2006)。引き続き、日本人クローン病に特有のOCTN遺伝子変異(多型ではなく)がないか解析を進めている。
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