(1)ES細胞を用いた分化誘導系の構築 マウスおよび霊長類ES細胞において肝分化を検出するための系の開発を行っている。この目的のため、アルブミンプロモーター下にDsRedを発現するレンチウイルスベクターを作成した。このウイルスをマウスまたは霊長類ES細胞に感染させ、肝細胞分化を誘導する系の構築を進めている。 (2)胎生肝細胞の分化誘導の分子メカニズムの解析 マウス胎生肝臓よりDlk^+CD45^-Ter119^-の肝幹細胞を分画し培養することで、肝幹細胞の増殖、分化を検出する系を構築した。これを用いて様々な転写因子等が肝幹細胞の分化、増殖に与える影響を解析しており、Hexなどホメオボックス転写因子等が肝細胞の増殖に影響を与えることを見出している。また、放射線照射と肝切除によりドナー側の肝再生を抑制した状態で移植を行うことで、この幼弱肝幹細胞が生着し増殖することを確認している。さらに本研究では、成体肝臓よりCD45^-Ter119^-Sca1^-c-Kit^-CD49f^+画分を分離して培養したところ、上皮細胞系の幹細胞が存在することがわかった。この細胞は培養開始直後はアルブミン陰性でCK19陽性の胆管系幹細胞であるが、オンコスタチンM、マトリゲルといった肝細胞分化誘導因子の刺激によって一部の細胞がアルブミン陽性の肝細胞へと分化することを見出した。これら成体の肝幹細胞と胎生期由来の幼弱肝幹細胞との機能的差異を検出するために、現在この細胞集団の解析を進めている。
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