研究課題
内視鏡的組織切除法時の最適な局注液の開発の前段階として、現在市販され臨床応用報告のある各種局注液の隆起保持能を検討した結果、ヒアルロン酸溶液、グリセオール液の隆起保持能が良好なこと、ヒアルロン酸に糖を添加することでヒアルロン酸溶液の隆起保持能を高めことができることをすでに報告してきた(Endoscopy.36:579-583,2004、Endoscopy.36:584-589,2004)。今回、各種局注液の組織傷害性についても検討を加え、高張液でありながらグリセオール液には組織傷害性がみられないことが明らかとなった(Gastrointest Endosc.62:933-42,2005)。これらの基礎的検討から、1%高分子量(1900KDa)ヒアルロン酸製剤(スベニール)とグリセオール液の混合溶液を用いることで組織傷害性がなく良好な隆起保持能を有する局注液を作成し、この溶液を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術良好な治療成績を報告することができた(Gastrointest Endosc.63:178-83,2006,Gastrointest Endosc.63:243-9,2006)。これらの研究結果を受けて、現在、独自の局注液開発に着手すべく、ビーグル犬を用いた動物実験を精力的に行っている。現時点までに得られた成果を述べると以下のごとくである。1.組織傷害性が認めらない最大グリセリン濃度は15%、安全域を考えると10%が妥当である、2、組織傷害性が認められない最大ブドウ糖濃度は15%、安全域を考えると10%が妥当である、3.以上より、0.125%1900KDaヒアルロン酸、10%ブドウ糖、10%グリセリン混合液が理論上、安全かつ有用な局注液である。実際に本局注液を用いて、ビーグル犬の食道および胃で内視鏡的粘膜下層剥離術を施行したところ、十分な粘膜下膨隆とともに組織傷害性のない切除標本が得られ、切除後潰瘍にも明らかな治癒遅延が見られないことが確認された。
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