研究課題
発癌におけるDNA低メチル化の役割を検討するため、以下の解析を行った。DNA低メチル化が細胞の増殖や分化に与える影響について明らかにするため、DNAメチル化酵素であるDnmt3aならびにDnmt3bのノックアウトマウスより得た胚線維芽細胞(MEF細胞)を用いて、その性質について解析を行った。その結果、Dnmt3b欠損MEF細胞において、ゲノム全体の脱メチル化、染色体の不安定性が生じ、細胞は早期に老化または不死化することが明らかとなった。このことは、Dnmt3bの機能低下により引き起こされる低メチル化が、遺伝子不安定性を通じて癌化に関与している可能性を示唆していた。さらに、このDnmt3bの生理的な役割を解析するため、Dnmt3bノックアウトマウスの表現型の解析を行った。また、ヒトの遺伝性疾患であるICF症候群で認められるDnmt3bの点変異(A609TならびにD823G)をノックイン法にて導入したマウス(ICFモデルマウス)を作製し、その表現型の解析も行った。これらのマウスでは、ゲノム全体のDNAメチル化レベルの低下を認めた。Dnmt3bのノックアウトマウスは胎生致死であり、心血管系の異常とそれによる出血や浮腫、肝臓の形成異常を認めた。ICFモデルマウスにおいては、DNAメチル化レベルはノックアウトマウスより高く、Dnmt3bの機能の部分的欠損と考えられた。これらのマウスでは、体重減少、顔貌異常、ならびにリンパ球の異常といった、ヒトICF症候群と同様の表現型を認め、ほとんどのマウスは生後24時間以内に死亡した。リンパ球異常は、生後、胸腺のTリンパ球が急速に細胞死に陥る結果生じることが明らかとなった。
すべて 2006 2005
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Development 133・6
ページ: 1183-1192
The Journal of Biological Chemistry 280・18
ページ: 17986-17991