研究概要 |
本研究では,MAPキナーゼを制御するMAPキナーゼフォスファターゼによるタイトジャンクション蛋白発現制御をin vitroで検討した.Wip1が過酸化水素刺激による大腸粘膜透過性上昇を抑制することが明らかとなった.またこの機序にタイトジャンクション蛋白:claudin-4が重要であることが明らかとなった. 実験にはCaco2細胞を使用した.過酸化水素刺激により大腸粘膜上皮細胞の電気抵抗は有意に低下し,p42/44 MAPキナーゼとp38 MAPキナーゼは活性化された.P42/44 MAPキナーゼとp38 MAPキナーゼの活性化を抑制するPD98059とSB203580で前処置すると,PD98059では過酸化水素による電気抵抗の低下は抑制されなかったが,SB203580の前処置により,電気抵抗の低下は有意に抑制された. 過酸化水素刺激によるタイトジャンクション蛋白(claudin-1,-3,-4,-7)の発現変化をウエスタンブロットで検討すると,claudinsの総蛋白量に変化がなかったが,NP-40による溶解性変化を検討するとclaudin-4蛋白の発現局在がNP-40非可溶分画から可溶分画に移動した.またmRNAの発現変化をreal time PCRで検討したが,面白いことにclaudin-4のmRNAは過酸化水素刺激により増加した.p38MAPキナーゼ活性を抑えることが知られているWip1を発現するアデノウィルスの投与により過酸化水素刺激によるp38MAPキナーゼ活性は有意に抑制された.またこのWip1発現アデノウイルスは過酸化水素による大腸粘膜上皮透過性の上昇とclaudin-4のmRNA発現上昇を有意に抑制した.また過酸化水素によるclaudin-4の局在変化を蛍光免疫組織学的に検討すると,claudi-4の局在に変化が見られ,タイトジャンクションを形成しない細胞表面へ移動した.この局在変化はp38MAPキナーゼ抑制剤とWip1により有意に抑制された. 今後はin vivoでの炎症性腸疾患モデルに対する検討を加えていきたいと考えている.
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