肝星細胞の増殖抑制をターゲットとした肝線維化の制御を達成するため、tumor necrosis factor (TNF)-related apoptosis-inducing ligand (TRAIL)に着目した。TRAILはFas ligandと同様にTNF familyに属し、281個のアミノ酸よりなる蛋白質であり、細胞種により選択的にapoptosisを誘導可能であることが知られている。TRAILはII型膜貫通型蛋白質であるため、分泌型TRAILを作成した。すなわち、細胞膜外ドメインに分泌シグナルのついた遺伝子を持つplasmid vector (PGEG.soluble TRAIL)およびcontrol vectorであるpGEG.4を調製した。次に、肝臓にPGEG.soluble TRAILを遺伝子導入した際の毒性の有無を調べた。マウス尾静脈からhydrodynamic procedureを用いてPGEG.soluble TRAILを投与後、肝機能測定および肝組織像検討を行ったが、明らかな肝毒性を認めなかった。F344系雄性ラットを用いて、肝線維化モデルを作製。可溶型TRAIL遺伝子投与群と、コントロール群であるpGEG.4投与群、saline投与群を設定し、検討している。肝線維化の評価は、肝組織のH.E.染色やアザン染色などを用いて行っている。また、可溶型TRAIL遺伝子は転移性肝腫瘍の治療に有用と考えられるため、同時に検討している。
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