ヒト胃癌細胞株における5-FUの増殖能への影響 ヒト由来胃癌細胞株の親株(5-FU感受性株:NUGC3)および5-FU耐性株(NUGC3/5FU/L)を用い、5FU添加による増殖能への影響をMTT法により検討したところ、以下の結果を得た。1)感受性株、耐性株のIC_<50>(50%細胞増殖抑制濃度)は各々6および320μMであり、耐性株は約50倍の耐性を獲得していた。2)両細胞株にIC_<15>(感受性株、耐性株おのおの2および50μM)に相当する5-FUおよび5-FUの分解酵素であるDPDの強力な分解阻害剤であるCDHPを投与したところ、COHP単独投与では細胞増殖に影響を及ぼさなかったが、5-FUおよびCDHPの同時投与においては、感受性株では5-FU単独投与群と細胞増殖抑制に差はみられず、耐性株においては5-FU単独投与群にくらべ細胞増殖抑制効果の増強を認めた。その効果は、5-FU単独投与時のものに換算するとIC_<30>(100μM)に相当することが判明した。 5-FU感受性株におけるCDHP併用添加による殺細胞増強効果の機序 上記で認めた殺細胞効果の増強機序として、5-FU代謝にまつわる酵素への影響として解析を試みた。その結果、DPD蛋白質発現量においては、感受性株に強く、逆に耐性株においては、DPD蛋白質発現はほとんど認められなかった。一方細胞増殖に強い影響を与えるthymidilate synthase(TS)の遺伝子発現において、併用添加群に抑制的な作用が認められることが判明した。これらの結果より、培養細胞系における併用投与での相加的作用は、5-FU分解酵素の抑制機序ではなく、増殖促進作用のあるTS抑制機序であることが示唆された。
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