研究概要 |
・新たな脂肪性肝炎動物モデルの作成 マウスを用いた新たな脂肪性肝炎動物モデルを作成するために、我々は液体の高脂肪食,Lieber high fat diet(Am J Clin Nutr. 2004:79:502)を使用した.C57BL/6マウス(6週齢,メス)を以下の4群に分けた(n=5).A群:Lieber high fat dietのみ.B群:通常の固形食+Lieber control fat diet.C群:通常の固形食+Lieber high fat diet.D群:通常の固形食+Lieber high fat diet+EPA(eicosapentaenoic acid).各群飼料開始5週後,10週後,15週後に肝臓を採取した.しかし,肝臓の組織切片のH-E染色及びAzan染色では,最も脂肪化が重度と予想されたC群でも15週後まで明らかな脂肪性肝炎の所見を認めなかった.A, B, D群では単純性脂肪肝の所見すら明らかでなかった.以上の結果は別途行ったラットの系でもほぼ同様であった.この理由としては,マウスやラットの主要リポ蛋白がLDLであること,多系統で動脈硬化が起こりにくいことなど,脂肪代謝のメカニズムがヒトと大きく異なる点が考えられた.そこで,次によりヒトと脂肪代謝が近いマウスを用いた実験系を考案した.自然発症アポE欠損高脂血症マウス(Spontaneously Hyperlipidemic Mouse)は自然発症型のアポリポタンパクE(アポE)遺伝子の変異型マウスである.主要な表現型はI)血清総コレステロール(TC)の高値,2)大動脈起始部に限局した粥状動脈硬化症,3)皮膚黄色腫である.このマウスにLieber high fat diet+固形高脂肪食を与えた群では,投与開始15週で著明な体重増加に加え,肝の脂肪化,及び中心静脈周囲の線維化形成を生じた.今後1)固形高脂肪食のみ,2)通常食のみ,3)Lieber high fat dietのみ等飼料の条件やn数を増やした再実験を予定している.
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