本研究の目的は、自己免疫性肝炎(AIH)の初発時と再燃時の免疫学的病態の差異、特に病態形成の根幹を成す自己抗原の性状の差異を明らかにするために、"AIHの経過中に肝内の免疫プロテアソームの構成が変化し、抗原提示される自己抗原の性状が変化し再燃が生ずる"という仮説をもとに、ポリエチレングリコールにより樹状細胞と高分化型肝癌細胞株を融合した細胞の皮下投与とIL-12の投与により肝内にリンパ球浸潤を伴う炎症、肝障害が生じるAIHモデルを用い、融合細胞投与前、肝炎誘導時、収束時、IL-12投与による肝炎再燃時の肝内免疫プロテアソームプロファイルの経時的解析を行い、抗原提示される自己抗原の性状の差異を検討することである。 今年度は20Sプロテアソームを精製方法の確立を行った。融合細胞投与前、肝炎誘導時、肝炎収束時、IL-12投与による肝炎再燃時にそれぞれ肝臓を採取、凍結した肝臓または採取後すぐの肝臓をホモジナイズしフィルター処理後の上清をDEAEセファセルに供し、得られたプロテアソームを含むタンパク分画をショ糖密度勾配遠心に供し、プロテアソーム分画をMonoQカラムにより精製を試みた。その結果、この方法により凍結肝臓からはプロテアソーム分画が得られないが、採取後すぐの肝臓を用いればプロテアソーム分画が得られることが明らかとなった。 現在はこの方法を用いて得られたプロテアソーム分画を2次元電気泳動により展開し、得られた各スポットを切出しトリプシン処理後にMALDI-MS解析を行ないプロテアソームのサブユニットプロファイルを解析する技術を確立中で、この方法によりAIHの発症、再燃時の肝内免疫プロテアソームのサブユニットプロファイルを比較する予定である。
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