研究概要 |
正常SD系雄ラットより骨髄液を採取し、比重遠心法(Histopaque-1077使用)を用いて単核球層を分離し、その細胞を2%ゼラチンコートした細胞培養皿に培養した。培養7日目には、血管内皮前駆細胞(EPC)と思われる紡錐形の細胞が細胞培養皿底面に観察された。その細胞の特性を調べるために、Immunocytochemistry、RT-PCR法、FACS解析を行った。本細胞は、蛍光顕微鏡を用いたImmunocytochemistryにてCD31,CD133,UEA-1,Flt-1,Flk-1,Tie-2の発現が確認され、またRT-PCR法においてもCD133,Flt-1,Flk-1,Tie-2の発現が確認された。本細胞のFACS解析では、Thy-1(CD90):67.1%,CD31:65.6%,Flk-1:56.9%の陽性細胞であった。さらに、血管内皮細胞に特異的なDil-acLDLの取り込みも確認でき、ヒトやマウスにてすでに報告されているEPCに準じた結果と考えられた。この未熟なEPCの対照細胞として、ラット大動脈由来(成熟)血管内皮細胞(RAEC)を採取し、EPCと比較したところ、RAECにおいてはCD133はImmunocytochemistry、RT-PCR法ともに陰性であり、EPCが未熟な段階にある細胞であることが確認できた。 EPCを線維肝に移植するにあたり、EPCにおける増殖因子の発現をRAECと比較した。リアルタイムPCR法を用いた定量評価において、EPC・RAEC両細胞において、HGF,TGF-α,EGF,VEGFの発現を認め、VEGFを除く3つの増殖因子に関しては、RAECよりEPCにおいて発現量は有意に増加していた。今後EPCを線維肝に移植するにあたり、好都合のsourseと考えられた。 以上の結果を踏まえて、動物実験モデルとしてジメチルニトロソアミン(DMN)を週3回4週間投与して肝線維症モデルラットを作製した。同時に正常SD系雄ラット骨髄由来のEPCを週1回4週間にわたり尾静脈より3×10^6個ずつ移植し、対照群(生食水投与群)と比較した。Azan-Mallory染色の結果のみを示すが、EPC移植により線維化の改善を認め、線維化率を測定すると、EPC非移植群(対照群)の約8%に対し、EPC移植群では約2.4%と有意に減少した。今後、さらなる検討を重ねる予定である。
|