前年度に、NPAT遺伝子の発現を効率良く抑制するsiRNAを見いだした。また、腫瘍抑制効果を個体レベルで判定するための腫瘍移植モデルの条件検討を行い、子宮頸癌、大腸がん、中皮腫の皮下移植モデルの作成に成功した。中皮腫に関しては、2種類の細胞株で成功し、今年度、中皮腫マーカーの免疫染色を行ったところ、それぞれ上皮型と肉腫型であった。中皮腫は上皮型が50-70%と報告されており、多くの患者さんに適用可能な治療法の開発が期待できる。中皮腫は、胸膜に発生することが知られており、他のがんでは、同所移植と皮下移植では、がんの特性が変わることも報告されている。そこで、より臨床に則したモデル系を樹立するために、胸膜腔への移植も試みた。胸膜腔への移植も上皮型、肉腫型の両方で成功した。胸膜腔移植中皮腫の増殖の評価には非侵襲的なイメージングが必要である。そこでCTとFDG-PETで、腫瘍をイメージングできるかどうかを検討した。CT撮像で0.5mmほどの腫瘍をイメージングできることがわかったが、呼吸によるアーチファクトがあることもわかった。呼吸同期法は今後検討していく必要がある。FDG-PETでもイメージングに成功した。PETは腫瘍の治療効果の判定に向いており、これらの結果から、胸膜腔移植モデルでもNAPT siRNAによる治療の効果の判定ができることがわかった。 皮下腫瘍モデルマウスに、NPAT siRNAを局所注射により導入して、腫瘍増殖能の変化を検討したが、コントロールsiRNA投与群に比べ統計的有意差はなかった。培養細胞レベルでは効果があったことから、個体レベルでのsiRNAの導入効率が悪く、NPATの発現抑制が十分でなかったことが考えられた。そこで、siRNA導入腫瘍のNPATの発現量を調べたところ、コントロールsiRNAとNPAT siRNAでは有意差はなかった。このことから、効率良く腫瘍にsiRNAを導入する方法を検討することが必要であることがわかった。
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