本研究は人獣共通感染症であるE型肝炎の実態を明らかにする目的で、県内のイノシシのHEV保有状況を調査し、遺伝子解析を行うことを主眼としている。初年度は、長崎衛生公害研究所と地元猟友会との協力を得て収集し得た72サンプルについてRT-PCR法による解析を行った。72検体中、2例(2.8%)が陽性であった。陽性であった2検体は1頭はオス、1頭は不明、体重は前者が40Kg、後者が不明である。これまでに、野生イノシシを調査した短報では7頭中3頭が陽性であったとの報告があり、これに比するとかなり低率である。また、月齢、性別の情報は将来的に伝播対策を考慮する際の必須情報であるので、収集方法、検体保存方法などを再検討する必要がある。また、系統樹作成を行ったが、今回はヒトにおいて最も感度の高いことが経験されているプライマー配列を用いたため、PCR産物が約110bpとやや短く、正確性に劣ると想像されるためこの点について次年度以降、より詳細に検討したい。 次年度以降は、イノシシおよびその周囲の環境サンプルについて、さらに検体を収集し陽性検体を確保し、ヒト由来株との比較検討を実施したい。
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