心不全は現在なお死亡率の高い疾患群であり、その治療の進歩が望まれている。近年、心不全の原因の一つに、心筋の炎症が関与していることが注目されてきている。本研究の目的は、心筋炎後心不全、拡張型心筋症のよい実験モデルである自己免疫性心筋炎ラットを用いて、HMG-CoA阻害薬、スタチンの有用性、およびそのメカニズムを明らかにすることであった。 既報のごとく心筋ミオシンを感作し、ルイスラットに自己免疫性心筋炎を誘導した。心筋炎ラットは感作後約2週で炎症極期となり、4週で炎症巣は治癒、あるいは瘢痕に置き換わり慢性期に入る。心筋炎感作後4週目からスタチンをラットに投与し(高濃度群、低濃度群の2群を作成)、心不全進展に対するその効果を、以下の項目について検討した(n=7)。 死亡率、心臓エコー検査の各種パラメーター、心臓カテーテル検査の各種パラメーター、心臓重量、心臓の各種免疫組織染色、血中各種サイトカイン濃度。 一回目の群では、上記のいくつかの結果において、スタチンが心筋炎後心不全の進展抑制に効果があるデータを得た。その後、nを増やし、結果をより確実なものにするための実験を行ったが、初回に得られた結果と異なる結果であった。 結果が不安定であり、その原因として、薬の投与方法(経口的投与)を考えた。そこで、現在ラットの体内にポンプを植え込み、経静脈的投与に方法を切り替え、実験を継続している。 本研究と関連する研究として、別紙の論文をこの2年間に報告させていただいた。
|