前年度までの検討の結果では、肝臓でのBNP発現を増加させた脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)過剰発現(Tg)マウスを用いて、挿管麻酔下に開胸して冠動脈を一定時間あるいは恒久的に結紮して作成した心筋梗塞モデルにおいて、新生血管が増加する可能性を示唆する結果が得られた。このモデルにおける心筋細胞再生の可能性について未分化細胞のマーカーであるc-kitやSca1あるいはCD34陽性の細胞の浸潤の有無について定性的な解析では、評価できるまでの結果は得られていなかった。骨髄由来細胞の心筋組織への浸潤については、BNP過剰発現マウスに心筋細胞特異的βガラクトシダーゼ発現マウス(αMHC promoterを使用)の骨髄細胞を移植した後に、心筋梗塞モデルを作成するモデルを試みた。このマウスでは、心筋組織の切片をβガラクトシダーゼの基質であるX-galで処理して発色を検討することにより、もし心筋組織内にX-gal染色陽性の細胞が検出できればそれが骨髄由来細胞であることが直接的に証明できると考えた。これに向けての心筋細胞特異的ベータガラクトシダーゼ発現マウスの開発では、X-gal染色にて心臓が特異的に染色されるマウスが準備できた。次の段階の実験にて対照マウスに心筋細胞特異的βガラクトシダーゼ発現マウスの骨髄を移植したモデルでは、心筋に非常に少数だがX-gal陽性細胞を検出することが出来た。しかしBNP過剰発現マウスへの移植、心筋梗塞作成については未だ評価できる結果を得られておらず、今後も検討を続けてみたいと考えている。
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