洞機能不全症候群や房室ブロックは心筋の刺激伝導系細胞の変性疾患であり、今までペースメーカ治療を必要としてきた。主研究者らは、NRSF/VP16をプラスミドを遺伝子導入することでNRSFを抑制させ、ペースメーカ特異的分子(HAC1、HAC2、CaCNA1Hなど)を発現させたヒト骨髄間質細胞に脱メチル化剤を投与しさらにマウス心筋と共培養することで心筋をペースメーカ細胞に特異的に分化させることを試みた。 まず、主研究者の研究室で分離培養したヒト骨髄間質細胞を培養し、増殖能力のよい幹細胞の能力を有する細胞を限外希釈法でクローニングした。クローニングした細胞の性質をFACSにて細胞表面マーカーを測定することで、細胞の性質を検討した。細胞はCD29陽性、CD90陽性、CD117陽性の骨髄問葉系幹細胞のマーカーを発現していた。 その細胞にNRSFに直接強力な転写エンハンサーであるヘルペスウィルスVP16を融合させたキメラ遺伝子NRSF/VP16を導入したプラスミドをリポフェクション法を用いて効率よくトランスフェクションすることに成功した。さらにその細胞に対して、従来、われわれが心筋への分化誘導をするために用いてきた方法(J Gene Med. 2004 Aug ;6(8):833-45)として、遺伝子導入ヒト骨髄間質細胞に脱メチル化剤を投与し、さらにマウス心筋細胞との共培養法を用いることにより、ペースメーカ細胞への分化を試みた。現在、心筋細胞様の拍動する心筋細胞の獲得に成功したので、ペースメーカ細胞に特異的な遺伝子を用いて、ペースメーカ細胞としての機能を有しているかどうかにつき検討中である。 また、NRSFノックアウトマウスを作成した。NRSFノックアウトマウスの骨髄細胞を抽出し、上記の心筋分化誘導法を用いてペースメーカ細胞への分化誘導に最適な条件を検討している。
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