研究概要 |
心不全の病態に関与するさまざまなサイトカイン、特にIL-6 familyと心臓交感神経との関連についての研究を進めてきた。 In vitroにおいては、星状神経節細胞の初代培養系を確立し、Leukemia inhibitory factor (LIF:白血病阻止因子)などのサイトカイン添加による自律神経の機能転換について検討を行っている。この系では、LIFの添加により星状神経節交感神経細胞におけるコリン作動性マーカー(CHT)の増加およびアドレナリン作動性マーカー(TH)の減少が確認された。 また、最近、In vivoにおける自律神経の機能転換が、gp130受容体を介した現象である報告がなされた。そして、その機能転換を誘導する因子として、これまで知られてきたIL-6 familyであるIL-6,IL-11,CNTF, OSM, CT-1,LIF以外の新しいサイトカインであるcardiotrophin-like cytokine (CLC)、neuropoietin/cardiotrophin 2 (NP)、cytoline-like factor 1 (CLF)の可能性が示唆されている。今後、これらの因子によるIn vitroでの機能転換の検討を行う予定である。 In vivoにおいては、これまでに心不全ラットモデルにおける心不全病態下での神経密度の増加、交感神経マーカーの発現低下を確認した。また、現在、遺伝子工学的手法を用いた検討として、Cre-LoxPシステムにより交感神経特異的にEGFPを発現するマウスを作製中であり、このマウスにおける心不全病態下での交感神経動態の解析を行う予定である。さらに、交感神経特異的にgp130受容体を欠損させたマウスを作製し、心不全病態下における神経動態の解析を予定している。
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