研究概要 |
野生型マウスとアンギオテンシンII type1a受容体ノックアウトマウス(ATKOマウス)にstreptozotocinまたはvehicleの腹腔内投与による糖尿病モデルと対照群を作成し、(1)正常血糖値の野生型マウス群 (2)正常血糖値のATKOマウス (3)糖尿病の野生型マウス群 (4)糖尿病のATKOマウス群の4群を比較して糖尿病による心不全発症に対するレニンアンギオテンシン系の遮断がもたらす効果につき検討した。 生理学的検討:心臓超音波測定装置による左心室機能の測定をおこなった。(3)糖尿病野生型マウスでは左心室の収縮能、拡張能の障害を認めたが、(4)糖尿病ATKOマウスでは左室機能は保持されていた。カテ先マノメーターを右内頚動脈から左心室に挿入して左心室内圧曲線を測定した。(3)糖尿病野生型マウスでは左室拡張能の指標であるnegative dP/dtの低下を認めたが(4)糖尿病ATKOマウスでは保持されていた。収縮能各種指標では差は認められなかった。 形態学的検討:臓器重量など両群の形態学的比較をおこなった。体重補正心重量は各群で差は認められなかった。病理学的検討ではHE染色、PAS染色をおこなったが、線維化の程度に差は認められなかった。 分子生物学的検討:拡張能低下の原因として心筋細胞内Caハンドリングの異常が疑われ、sarcoendoplasmic reticulum Ca-ATPase(SERCA)mRNAの測定をおこなったところ、(3)糖尿病野生型マウスではmRNAの発現の低下を認めた。(4)糖尿病ATKOマウスでは保持されていた。線維化の指標として測定した心筋mRNA(type I, III collagen)では有意な差は認められなかった。 以上の内容を第70回日本循環器学会総会・学術集会で発表の予定
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