研究概要 |
野生型マウスとアンギオテンシンII typela受容体ノックアウトマウス(ATKOマウス)に streptozotocinまたはvehicleの腹腔内投与による糖尿病モデルと対照群を作成し、(1)正常血糖値の野生型マウス群(2)正常血糖値のAT: KOマウス(3)糖尿病の野生型マウス群(4)糖尿病のATKOマウス群の4群を比較して糖尿病による心不全発症に対するレニンアンギオテンシン系の遮断がもたらす効果につき検討した。 昨年度の検討では心臓超音波やカテーテルによる左心室機能の測定では(3)糖尿病野生型マウスでは左心室の収縮能、拡張能の障害を認めたが、(4)糖尿病AT: KOマウスでは左室機能は保持されていた。 また分子生物学的検討として心筋細胞内Caハンドリングの異常が疑われ、sarcoendoplasmic reticulum Ca-ATPase(SERCA)mRNAの測定をおこなったところ、(3)糖尿病野生型マウスではmRNAの発現の低下を認めた。(4)糖尿病ATKOマウスでは保持されていた。 今年度においては、その機序として酸化ストレスの関与が疑われ、解析をおこなった。酸化ストレスを誘導する酵素であるNADPH oxydase(p47)は(3)糖尿病野生型マウスでmRNAレベルでの発現が亢進しており、(4)糖尿病ATKOマウスでは保持されていた。また酸化ストレスに拮抗する働きを持つGlutathione peroxideseは(3)糖尿病野生型マウスで代償的にmRNAレベルでの発現が亢進しており、(4)糖尿病ATKOマウスでは保持されていた。 また熱ショック蛋白が虚血再還流障害モデルなどで、心機能障害に対し保護的に作用する報告があり、本モデルに対する影響について解析をおこなった。熱ショック蛋白の一種であるHsp70、110のmRNA発現が(3)糖尿病野生型マウスでは低下しており、(4)糖尿病ATKOマウスでは保持されていた。 Hsp70については蛋白レベルでも同様の傾向がみられた。またHsp70の発現はnegative dP/dtと、Hsp110の発現はpositive dP/dt, negative dP/dtと有意に相関しており、熱ショック蛋白の左室機能への関与が疑われた。
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