研究課題
本研究の目的は、低分子量G蛋白質Radの情報伝達系を同定し心臓における役割・意義を解明することである。代表者は、前年度に作製したドミナントネガティブ変異型Radを心臓特異的に発現したトランスジェニック(TG)マウスの表現形解析及び機能解析を行った。TGマウスでは12週齢において心肥大、心拡大などの形態的異常や心機能異常は認めなかったが、活動電位持続時間やQT間隔などの延長を認めた。さらに、TGマウスでは心臓の興奮収縮連関や活動電位形成に重要な役割を果たしているL型カルシウムチャネルの膜発現が増加していることがわかった。代表者は前年度に野生型Radが、L型カルシウムチャネルの細胞膜へのトラフィッキングを抑制することを心筋細胞で確認しており、TGマウスではドミナントネガティブRadの強発現により内因性Radの作用が弱まったためにL型カルシウムチャネル発現が増加したものと考えられた。さらに、24時間心電図記録を行ったところ、洞機能不全や心室性期外収縮の出現が確認され、エピネフリン腹腔内投与により心室頻拍が誘発された。以上の結果より、Radが不整脈発現において重要な役割を果たしている可能性を示唆した。特にTGマウスにおいてQT間隔延長を認めたことは、QT延長症候群の原因遺伝子の候補となりうる点で興味深い結果であった。一方、RadはRhoキナーゼ(ROCK)と結合することが知られているが、代表者はRhoキナーゼのうち心臓優位に発現しているROCK2と特に結合しやすいことを確認した。Rho/ROCK系は心臓におけるコネキシン発現にかかわっており、TGマウスにおいてもコネキシンの発現が減少していることがわかった。このコネキシン発現量の減少が、L型カルシウム電流が増加したにもかかわらず洞機能低下が起こった主要因であると推測された。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件)
Circulation Journal Vol 71, SuppI
ページ: 172-172