【目的】Coenzyme Qはミトコンドリア電子伝達系において重要な役割を担っており、その欠乏はミトコンドリア由来活性酸素種発生をもたらす。Ubiquinol (CoQH2)はCoenzyme Qの還元型であり、それ自身脂溶性の抗酸化物質である。CoQH2の添加がin vitroにおける細胞保護作用を有することは報告されているが、内因性CoQH2と動脈硬化の関連については未だ明らかではない。今回、一般集団における循環血中CoQH2と無症候性動脈硬化との関連について検討することを目的に以下の横断研究を行った。【方法】明らかな心血管病変を有さない検診受診者(n=114)において古典的冠危険因子を評価し、血管内皮機能の指標として反応性充血時上腕動脈血流依存性血管拡張反応(FMD)を、無症候性動脈硬化の評価として総頸動脈のプラークスコアーを、高解像度超音波診断装置により測定した。CoQH2はELISA法により測定した【結果】単変量解析において循環血中CoQH2は予想に反してメタボリック症候群の因子であるBMI(p<.005)、トリグリセリド(p<.005)、平均血圧(p<.005)、インスリン抵抗性の指標であるHOMA(p<.005)、酸化ストレスマーカーであるMDA-LDL(p=.007)と有意な正の相関を示した。CoQH2は血管内皮機能FMD(p=.03)の低下に伴い低下し、頸動脈プラークスコアー(p=.006)の進展と共に上昇した。CoQH2と古典的冠危険因子により構成された重回帰分析を行ったところ、CoQH2はFMDとプラークスコアー両方の独立した規定因子であった。【結語】ミトコンドリア抗酸化物質CoQH2はメタボリック症候群において逆説的に上昇し、血管内皮機能異常や無症候性動脈硬化と密接に関係した。今回の我々の結果は、CoQH2がむしろ酸化促進物質として動脈硬化の発症進展に関与する可能性を示唆する。
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