(1)白血球除去療法したドナーラットの、SCIDマウスへの移植効果 前年度までに確立した自己抗原(β1受容体、M2受容体、Na-K-ATPaseの3種)反復免疫による不全心ラットより末梢血リンパ球を採取しSICDマウスへ移植した。おのおの移植すべきリンパ球を白血球除去(以下LCAP)したサンプルにて実験したが、いずれにおいてもLCAP処置によって、観察されるべき心病変はブロックされた。LCAPを行わない偽カラムを通過させたサンプルでは、いずれの自己抗原においても、これまでどおり心体重比増加・心内腔の拡大を認めた。いわゆる心抑制性自己抗体の測定(今年度に新規に実験方法を確立)によると、各群でドナーラットに本自己抗体が存在することを確認した。 (2)反復免疫する心肥大ラットモデルに対するLCAPの効果 実験結果を年度中に出すために反復免疫時期に調整を加えた。すなわちNa-K-ATPaseポンプ1mg/回を抗原として、30日齢と150日齢に2週間間隔で2回ずつ反復免疫を行った。ラット白血球除去療法は、60日齢、90日齢ならびに120日齢の3回、4mL計5回(合計20mL)の血液を尾静脈より採取しLCAPカラムを通したあと体内に戻す手技によって施行した。210日齢において開胸実験を行った。対照免疫群はアジュバントのみ(偽免疫群)、対照LCAP群(偽LCAP群)は偽カラムで、同一手技の実験をした。各n=5で4群の比較をした(総計n=20)。心体重比ならびに血漿BNP値は、実免疫・実LCAP群のみ、他の3群(実免疫・偽LCAP群、偽免疫・実LACP群、偽免疫・偽LCAP群)より有意に減少した。すなわち反復免疫による心肥大ラットに上記LCAPを施行することで、心肥大が抑制された。 まとめ 3年にわたる検討から、拡張型心筋症に対しては白血球除去療法が新規治療法となる可能性が示唆された。
|