(1)心筋特異的Gab1Gab2遺伝子欠損マウスの作成及び解析 ほ乳類のGabファミリースキャッフォールディングアダプター蛋白質はGab1からGab3まで3種類あるが、RT-PCRでマウス心臓の発現を検討すると主にGab1とGab2が発現していた。Gab1遺伝子欠損マウスは心筋のひ薄化を伴う胎生致死であるため、Cre-loxPシステムを用いて心筋特異的Gab1欠損マウス(Gab1 HeartKO)を作成した。このマウスは正常に出生し心機能的・病理組織学的異常を認めなかった。Gab1とGab2はお互いにその機能相補することがin vitroの系で報告されていたため、Gab2遺伝子欠損マウス(Gab2KO)とGab1 HeartKOマウスを交配し、心臓でのみGab1/Gab2両遺伝子を欠損するマウス(Gab1Gab2DKO)を作成した。このマウスも正常に出生するが、10週齢で心体重比は野生型、Gab1HeartKO、Gab2KOマウスの3群ではいずれも4.5前後なのがGab1Gab2DKOでは6.8と有意に増加していた。心エコーでもGab1Gab2DKOマウスでのみ有意な心収縮能低下と左室拡張末期径の拡大が認められた。ノーザンブロットでも同様にGab1Gab2DKOマウスにおいてのみ心房性ナトリウム利尿ペプチドとalpha-skeletal actinのmRNAが他の3群に比して増加していて、Gab1Gab2DKOマウスは心不全を呈するマウスと確認された。現在はその心不全の分子メカニズムの解析中である。 (2)血管内皮特異的Gab1遺伝子欠損マウスの作成 Gab1floxマウスとTie2-Creトランスジェニックマウスと交配して血管内皮特異的Gab1欠損マウス(Gab1ECKO)を作成したが、正常なメンデル比で出生したため、Gab2KOマウスと交配して血管内皮でGab1/Gab2を両方欠損するマウスを作成している。
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