研究概要 |
本研究は、齧歯類肺胞上皮I型細胞におけるマーカー遺伝子T1alphaの機能解析を目的としている。まず、T1alphaおよびT1alpha RNAi導入ベクターの作製をおこなった。マウス肺mRNAからRT-PCRを用いてクローニングし、発現ベクター(CMVプロモーター)に組み込んだ。また、T1alpha RNAi発現ベクター(H1プロモーター)も作製し、HeLa細胞に共トランスフェクションを行い、T1alphaの発現抑制をRT-PCR, real time RT-PCRで確認したところ、T1alphaRNAiは遺伝子発現を80%抑制した。遺伝子導入のコントロールとして、EGFP発現ベクターを用いたところ、遺伝子導入効率は35%程度と低いため抑制率が低いと考えられた。そこでT1alphaを発現しているマウスMC3T3E1細胞およびT1alpha siRNAをもちいて実験を行った。遺伝子導入効率は螢光ラベルされたsiRNAを用いて、フローサイトメトリーで解析した。導入効率は90%強で、遺伝子発現抑制率も98%と高値を示した。また、フローサイトメトリーを用いてタンパク質の発現の抑制率は84%であった。この差の原因として、T1alphaタンパク質の半減期が考えられた。十分な抑制効果が認められ、このT1alpha siRNAの配列を用いて、実験を進めることに決定した。 次に、マウスの肺胞上皮I型細胞の初代培養を行った。マウスの肺胞上皮II型細胞からI型細胞への分化を検討するため、II型細胞のマーカーとしてproSP-C蛋白、I型細胞のマーカーとしてT1alpha蛋白を用いて、初代培養の細胞を染色した。II型細胞の割合が50%を切っており、論文で報告されている80%を大きく下回っていた。現在、肺胞上皮II型の初代培養の条件検討をおこなっている。
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