研究概要 |
1.臨床研究 私たちは、第2相臨床試験で未治療進行非小細胞肺癌症例においてシスプラチン・ビノレルビン(VC)治療群に比べてニトログリセリン(GTN)併用VC治療群の方が無増悪生存期間が延長することを報告した。更に、手術可能肺腺癌症例において術前にGTNを常用していた症例の切除腫瘍組織ではGTNを使用しなかった症例に比べ、HIF-1α・血管内皮成長因子(VEGF)・P-glycoprotein(P-gp)の発現は有意に減少していた。また、未治療進行肺腺癌症例において抗癌剤(ドセタキセル・カルボプラチン:DCb)投与前にGTNを3日間投与し、血漿中VEGF濃度をGTN投与前後で測定したところ、GTN投与後に血漿中VEGF濃度が-16pg/mL以上滅少する症例ではGTN併用DCbが奏効する感度・特意度が84%と高いことを報告した。 2.基礎研究 マウス肺腺癌継代細胞であるLLC細胞とマウス大腸がん継代細胞であるcolon26細胞を用いて担癌モデルを製作した。LLC細胞とcolon26細胞の双方において、腫瘍成長曲線はGTN併用シスプラチン化学療法の方がシスプラチン単独化学療法よりも有意に低値を示した。生存曲線もまたGTN併用シスプラチン化学療法の方がシスプラチン単独化学療法よりも良好であった。GTN投与により腫瘍内のHIF-1α,P-gp,VEGF発現は有意に減少レ、活性型p53蛋白は増加することが判明した。更に、予想に反してGTNは腫瘍組織への抗癌剤の薬物分配を促進しなかった。腫瘍組織の腫蕩内微小血管密度(IMD)を測定したところ、両群の間でIMDの統計学的有意差は認められなかった。 GTN投与は血管新生を介さず、腫瘍内の血流を増加することによって腫瘍内酸素分圧を増加し、HIF-1pathwayの抑制と活性型p53蛋白増加を介して抗癌剤の増感作用をもたらすことが示唆された。
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