1.低酸素暴露マウスの肺組織におけるp53、CDK inhibitorの検討 約10%酸素濃度の環境下でp53KOマウスを8週間飼育後、全肺組織を摘出しreal-time RT-PCRとWestern blot法によるp53、p21、p27のmRNA、蛋白発現を検討した。野生型マウスでは低酸素によりp53の蛋白発現は亢進し、p21の転写活性と蛋白発現が亢進、p27はmRNA、蛋白いずれも有意な変化は認められなかった。KOマウスにおいては野生型で認められたp21の低酸素による誘導は認められず、p27も有意な変化は認められなかった。肺血管局所での同遺伝子の発現を検討するため、同様に低酸素に8週間暴露したマウスを、気管より5%sucrose加OCTコンパウンドを注入後に瞬間凍結、新鮮凍結切片を作成し、組織学的に50〜100μmの肺微細血管をLaser-capture micro dissection法を用いて抽出しmRNAの発現を検討、全肺組織と同様にP53ノックアウトマウスにおいて、野生型に比し低酸素暴露によるp21の発現が抑制されていた。 2.肺血管細胞における低酸素下でのp53、CDKinhibitorp21、p27の発現の検討 低酸素環境下におけるヒト肺動脈平滑筋、ヒト肺線維芽細胞のp53、p21、p27のsiRNAによる遺伝子抑制を用いたBrdUの取り込みによる細胞増殖を検討した。いずれの遺伝子抑制によってもコントロール群に比して、細胞増殖は亢進したが、2%の中等度の低酸素下においてはp27の遺伝子抑制が、0.1%の高度の低酸素下においてはp53、p21の遺伝子抑制により細胞増殖が有意に上昇した。 結語.低酸素における肺血管リモデリングにはp53がp21を介して抑制的に作用しており、p27は中等度の低酸素下において重要な役割を持つと考えられた。
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