特発性肺線維症は、fibroblastic fociの病理学的特徴を有する。線維化病変における線維芽細胞は組織リモデリング、細胞外マトリックスの過剰沈着、そして肺胞上皮との相互作用などで重要な役割を担うと考えられている。近年、線維化病変で多様な表現型を示す線維芽細胞の中に、骨髄由来やepithelial-mesenchymal transition(EMT)を介した上皮細胞由来の線維芽細胞が同定された。血管内皮細胞が付加的な線維芽細胞を誘導するかを検討するために、血管内皮細胞株M1における活性型RasおよびTGFBの効果をflow cytometryおよびRT-PCRにて評価した。TGFB投与活性型Ras導入細胞株は血管内皮細胞マーカーの有意な発現減少が認められた一方、間葉系細胞マーカーの新たな誘導が認められた。活性型Ras導入細胞株は、TGFBの除去によっても発現マーカーの変化は持続した。ヌードマウスに接種した活性型Ras導入株のex vivo樹立を試みた。樹立された細胞株は血管内皮細胞特異的マーカーの発現をほぼ消失し、間葉系細胞特異的表現型の発現は、Col Iの発現レベルでTGFB非投与時においても活性型Ras(+)細胞の約2.5倍の発現レベルを示し、TGFB投与により活性型Ras(+)細胞の約7倍の発現増強が認められた。さらに、血管内皮特異的LacZ発現マウスから肺線維芽細胞を樹立した。X-gal染色において約10%のLacZ発現線維芽細胞を認めた。これらは、CD31の発現を認めなかった。今回の所見は、EMTと同様に、血管内皮細胞がEndothelial-MTを介して肺線維芽細胞の一部を構成する可能性を示した。これらの知見を元に線維芽細胞の細胞起源の探索をさらに進めることにより線維芽細胞を標的とする治療開発が進められると考えられた。
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