平成18年度は症例数をさらに84例に増やし、肺腺癌切除標本におけるHRKの発現を免疫組織化学的に検討した。症例の内訳は男性37例、女性46例、平均年齢は63.9歳(39-89歳)であった。組織型は気管支肺胞上皮型13例、腺管型18例、乳頭型53例であり、分化度は高分化型37例、中分化型41例、低分化型6例、病期はStage IA25例、IB13例、IIA5例、IIB10例、IIIA17例、IIIB14例であった。 HRK高発現症例(細胞質陽性所見が頻繁にみられる任意の3カ所を選択し、1000個の癌細胞をカウントし、40%以上の癌細胞で陽性の場合に高発現とした)は19例、低発現症例は65例であった。P53高発現症例は42例、低発現例も42例であった。HRKの発現は統計学的に性別、年齢、組織型、分化度、病期、P53の発現となんら相関を示さなかった。Kaplan-Meier法による生存分析では、統計学的有意差こそみられなかったものの(Logrank検定:P=0.31)、生存曲線はHRK低発現の症例群と高発現の症例群で上下に明瞭に区分された。すなわち、HRK低発現症例の生命予後が良く、高発現症例の生命予後が悪い傾向が示唆された。この結果は、「Pro-apoptotic proteinであるHRKはアポトーシスの盛んな腫瘍すなわち比較的予後良好な症例で高発現するだろう」という当初の予想とは正反対の結果であり、逆に興味深い。何故このような結果を得たのか、さらに症例数を増やし、また他のアポトーシス関連因子との関連を免疫組織化学的手法で検討したいと考えている。 Western blotおよびMetylation specific PCRは、材料あるいは手技の問題からか、安定した結果を得ることが出来ず、結果として採用し得なかった。 上記の検討をさらに加え、研究成果を学会、論文にて公表したい。
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