慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態における好中球性気道炎症の機序に関する検討で、昨年度は血液好中球の遊走活性や喀痰の好中球遊走活性実験を日本人患者の検体で行い、英国人患者と同様にCOPD重症例では健康喫煙者に比べて活性が低下していることを報告した。 従来、全血をデキストランと低浸透圧処理することにより好中球を回収し、それを蛍光染色した上で遊走実験を行ったが、本年度は以下の点について追加実験を行った。 a)別の好中球回収法でも結果を再現できるか。 上記の好中球の回収方法では細胞に刺激を与え実験結果を左右する可能性があると指摘された。そこで、従来の方法と不連続血漿Percoll回収法を比較するため、2例の健常非喫煙者の血液を2つの方法で同時に処理し遊走活性を観察した。その結果、f-MLP及びIL-8の刺激に対して、いずれの方法で処理した好中球も同様の反応曲線を示した。 b)同一人の血液を異なる日に採取し遊走実験を行っても結果は安定しているか。 2人の健常非喫煙者から、1ヶ月以上あけて3回血液を採取し、各々の日に遊走実験を行った。その結果、f-MLP及びIL-8の刺激に対して、各人の好中球は3回とも同様の反応曲線を示した。 c)喀痰の好中球遊走活性実験;血液ドナーを変えても結果を再現できるか。 これまで主に英国人の喀痰サンプルを用いて重症度別に喀痰の好中球遊走活性を検討したが、単一の健常人ドナーから得られた好中球を用いたものであった。本年度は健常人血液ドナーを6人に増やし再現性を検討した。喀痰検体は英国より空輸で日本に取り寄せた。その結果、血液ドナーを変えてもCOPD重症例の喀痰は健康喫煙者の喀痰に比べて好中球を遊走させる能力が低下していることが再現された。 英国人と日本人のデータをひとつにまとめて2007年3月号のAm J Respir Crit Care Medに報告した。英国人と日本人の結果は同様の傾向にあったが、その詳細な検討については来年度に行う予定である。
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