研究概要 |
喘息急性増悪の原因として、ウイルス感染が高率に関与している。その増悪機構には不明な点が多いが、1)感染気道上皮細胞からのケモカイン、サイトカインの分泌および、2)感染による気道上皮細胞死の2点の関与が想定される。近日病原体認識受容体として10種のヒトToll-like receptor (TLR)が同定されたが、TLRリガンドが気道上皮細胞生存に及ぼす影響は網羅的には全く検討されていない。 気道上皮細胞株BEAS-2BをTLR2,3,4,5,7/8,9リガンドで72時間刺激したところ、TLR3リガンドpoly I:Cのみが有意なIP-10産生を誘導し、IL-8産生を有意に増強した。同様に細胞死に関しても、poly I:Cのみが時間・用量依存的に生存細胞減少、アポトーシス、ネクローシス細胞増加を惹起し、細胞死は抗TLR3抗体で一部抑制された。また、zVAD-fmkやzIETD-fmk等のcaspase阻害剤で、poly I:Cによる細胞死は抑制され、細胞死の過程へのcaspaseの関与が考えられた。また、poly I:CでCD95 (Fas)発現は有意に増強し、Fas抗体による細胞死が増強したことから、機能的なCD95発現増強も示唆された。 poly I:Cはウイルス増殖過程で生成されるdsRNAのアナログである。ウイルス感染気道上皮細胞はケモカインを産生して生体防御に必要な炎症細胞を集積させると共に、自らの細胞死によりさらなるウイルスの増殖、伝播を防いでいる可能性が示唆されたが、喘息の状況下ではアレルギー性炎症増悪に寄与しうる可能性が考えられた。次年度は、in vitroでの本結果を踏まえて、アレルギー性炎症気道炎症の増悪にTLR3リガンドがいかなる影響を及ぼすかをin vivoで検討する予定である。
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