1.目的および方法:一般的に腎臓は血管新生が引き起こりにくい臓器であるが、腎傷害モデル動物の残存腎の微小血管維持に血管新生因子が関与することが知られる。一方、粥状動脈硬化で新生血管がその不安定化に強く関与することも知られ、腎の血流維持に関して、血管新生因子の重要度は増している。肝細胞増殖因子(HGF)は血管新生促進因子としてよく知られるが、その一方でスタチン系製剤は低濃度で血管新生促進因子として作用し、高濃度で血管新生抑制因子として作用することが知られる。ことから、その協調作の機序について検討した。皮膚線維芽細胞と臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を共培養し、HGFおよびフルバスタチン(Flu)を単独または併用下に11日間培養し、形成された管腔を解析した。HUVECをHGFおよびFluで刺激し、Aktおよびp38MAPKのリン酸化をウエスタンブロット法で、アポトーシスをTUNEL染色で細胞増殖能をBrdUの取り込みにより検討した。 2結果:低濃度FluはHGFと相加的な管腔形成の亢進を認めたが、高濃度FluはHGFによる管腔形成を完全に抑制した。低濃度FluはHUVECのアポトーシスを抑制し、高濃度Aktは細胞増殖能を完全に抑制した。低濃度FluはHGF刺激によるHUVECのp38MAPKリン酸化を抑制し、高濃度FluはAktリン酸化を抑制した。 3.結論:低濃度FluはHUVECのHGF刺激によるp38MAPKリン酸化を低下することアポトーシスを抑制し、高濃度FluはHGF刺激によるAktリン酸化を抑制することにより細胞増殖を抑制し、結果としてHGFによる血管新生を強力に調節していた。
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