研究概要 |
背景 免疫複合体が関与する腎炎の病態を解明するには、(1)免疫複合体が沈着するメカニズム(2)沈着した免疫複合体が誘導する免疫炎症反応を明らかにすることが必要である。我々は、(2)において白血球機能発現に極めて重要な接着因子Mac1が果たす役割に着目した。本研究では、II型アレルギー腎炎マウスモデルとして新規に構築した血栓性糸球体腎炎モデルのMac1欠損マウスにおける病態の表現型とそのメカニズムの検索を行う。 研究方法 抗糸球体基底膜抗体およびLPSをWT(C57B6/j)マウスあるいはMacl KO(C57B6/j background)マウスの尾静脈から静注することにより、96時間後に著しい糸球体内微小血栓の形成と急性腎不全(BUN>100mg/dl)を呈するモデルを構築した。このモデルの血球依存性を検討するため、血球表面抗原に対する抗体を用いたimmunodepletion法を採用した。好中球を除去するため抗Gr-1抗体を、血小板を除去するため抗GPIbalpha抗体をそれぞれ抗糸球体基底膜抗体投与の前に静注した。糸球体内血栓はPAS染色、フィブリン沈着はPTAH染色、糸球体内浸潤好中球はesterase反応を用いて評価した。末梢血の血算、生化学検査(BUN, Cr, LDH)は三菱化学に委託した。 結果 Mac1 KOマウスでは生化学検査において、腎機能障害(BUN, Cr)および非特異的組織傷害マーカーであるLDHの上昇が顕著に抑制された。血液学的にはWTで顕著に認められる血小板減少がMac1 KOでは有意に抑制されたが、末梢血好中球数に優位差を認めなかった。組織学的には糸球体内血栓形成がほぼ完全に抑制され、フィブリン沈着、好中球の糸球体内への浸潤の抑制を認めた。好中球を免疫学的に除去したマウスでは血栓性糸球体腎炎は抑制されたが、血小板を除去したマウスにおいては腎炎は著しく増悪した。
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