血栓と出血が臓器障害をもたらす実験系として、抗糸球体基底膜抗体(ウサギ血清)とLPSを投与することによりマウス血栓性出血性糸球体腎炎モデルを構築した。これは糸球体内血栓と血尿、急性腎不全および血小板減少を呈しヒトの溶血性尿毒症症候群(HUS)に酷似する。この病変は好中球を除去したマウスでは有意に予防されることから、このモデルは好中球に依存する。また、白血球接着因子Mac-1あるいは好中球エラスターゼ(NE)欠損マウスにおいて病変は著明に予防された。さらに、Mac-1欠損マウスではフィブリンのエラスターゼによる分解産物の生成が抑制されていたことより、Mac-1が生体でのエラスターゼの活性を制御している可能性を示した。 また、このモデルにおける血小板の関与を調べるため血小板を免疫学的に除去したマウスにおいて病変を惹起したところ、予想に反して腎不全は著しく増悪し致死的であった。ところが、Mac-1欠損マウスにおいて血小板を除去してこのモデルを誘導しても病変はほぼ完全に抑制されたままであった。これらのことは、血小板が病初期に傷害される血管を止血機序により保護している可能性を示し、またMac-1が病態の絶対的決定因子であることを示唆する。さらに、病初期の炎症性サイトカインおよびケモカイン32種類を測定したところ、野生型マウスとMac-1欠損マウスではそれらの血中濃度はほぼ同等であったことである。すなわち、サイトカインが豊富に存在してもMac-1をブロックするだけで病変はほぼ完全に抑制されることを示す。このように、好中球が主体となるし血栓性糸球体腎炎モデルではMac-1が決定的な役割を果たすことを解明し、治療的予防的可能性を示すことができた。これらの結果について現在論文投稿中である。
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