申請者は腎特異的遺伝子の探索の過程でUSAG-1を見いだし、USAG-1がBMP(Bone Morphogenetic Protein)桔抗分子であることを証明した。さらにUSAG-1の発現部位が近年腎修復因子として注目されているBMP-7と完全に一致することから「USAG-1が生体内においてBMP-7の腎保護修復作用を抑制している」という仮説をたてた。 平成17年度はこの仮説を証明するためにUSAG-1ノックアウトマウス(以後KO)を作成し、KOが野生型に比して腎障害に抵抗性であること、KOではBMPシグナルが増強していること、KOにBMP-7の中和抗体を投与すると腎障害抵抗性が消失することを明らかにした(発表論文1)。以上の結果より上記の仮説が検証され、USAG-1の中和抗体や発現抑制剤には腎疾患治療薬としての可能性があることが明らかとなった。USAG-1の発現は腎臓特異的であり、このような薬剤はBMP-7自体の投与よりも副作用が少ないと予想される。 この知見をもとにUSAG-1の抗体を作成する目的で、抗体作成に定評のあるキリンビール医薬探索研究所と共同研究を開始しUSAG-1抗原の精製に着手した。既に中和活性のアッセイ系は確立しており、今後KOにUSAG-1を免疫し、効率よく抗体を産生させる予定である。 さらにの発現抑制剤にも同様の可能性があることから、の発現制御機構について解析を進め、その制御機構を明らかにした(投稿準備中)。同時にBMP-7の発現を増加させ、USAG-1の発現を減少させるようなcompoundをスクリーニングする目的で、BMP-7やUSAG-1の部位にLacZをノックインしたマウスの腎臓から初代尿細管培養細胞を確立した。さらにそれらの細胞におけるLacZ活性がBMP-7、USAG-1の発現量を反映することをも検証した。
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