近位尿細管に発現するナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NaPi-IIa)は、腎臓でのリン再吸収活性の律速段階を担う重要な分子である。我々は、近位尿細管細胞の刷子縁膜上において、NaPi-IIaは、ezrinと呼ばれるアンカータンパクを介して細胞骨格アクチンと結合し、巨大な分子複合体を形成していることを明らかにしてきた。本研究では、ezrinを介した分子複合体の調節機序とホルモン調節性のエンドサイトーシスの分子メカニズムについて明らかにすることを試みた。 その結果、ezrinは、PTHによりリン酸化されること、またリン酸化によりNaPi-IIaのエンドサイトーシスが促進することを見いだした。さらに、ezrinのC末端側半分を欠損させたドミナントネガティブ変異体を発現させると、NaPi-IIaの細胞膜上への局在およびPTHによるエンドサイトーシスが抑制された。以上のことから、ezrinは、NaPi-IIa複合体の細胞膜へのターゲティングに必要な分子であり、細胞膜上のマイクロドメインで複合体をアクチンに結合させることで安定化させているものと推察された。また、PTHシグナルによるezrinのリン酸化は、この複合体をアクチンから切り離し、不安定化させ、エンドサイトーシスを促進するものと考えられた。さらに、NaPi-IIa複合体の構成分子でかつPTHシグナルのターゲットとなりうる分子の同定をプロテオミクス解析により同定を進めた結果、新たに複数の候補分子の同定に成功した。今後は、これらの分子の同定を進め、NaPi-IIa複合体の全容を明らかにすると共に、これらの分子の機能解析を進め、PTHによる調節の分子機序を明らかにする予定である。
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