近位尿細管に発現するナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NaPi-IIa)は、腎臓でのリン再吸収活性の律速段階を担う重要な分子である。我々は、近位尿細管細胞の刷子縁膜上において、NaPi-IIaは、ezrinと呼ばれるアンカータンパクを介して細胞骨格アクチンと結合し、巨大な分子複合体を形成していることを明らかにしてきた。昨年度の研究では、PTHによるNaPi-IIa複合体の調節機構においてPTHの下流にあるPKAおよびPKCがezrinと呼ばれるリンカー蛋白をリン酸化することを見出した。本年度は、さらに詳細に検討を行った結果、PKAおよびPKCにより、ezrinのN末端にあるFERMドメインの249番目のserine残基のリン酸化が、NaPi-IIa複合体形成に重要なscaffolding蛋白であるNHERF-1/EBP50との結合に極めて重要であり、リン酸化によりNHERF-1/EBP50との相互作用がほぼ完全に消失し、近位尿細管細胞におけるNaPi-IIaの細胞膜状上での局在を著しく減少させることを明らかにした。さらに、Blue-Native-PAGEとSDS-PAGEを用いた2次元電気泳動法によりNaPi-IIa複合体の解析を行ったところ、NaPi-IIaには複数の高分子複合体が存在することが明らかとなった。250〜300kDa付近の複合体は、従来から言われているNHERP-1/EBP50およびezrinを含む分子から構成されいたが、1000〜1300kDa付近の高分子複合体は、これらのscaffolding蛋白やリンカー蛋白を含まず、新たな複合体が存在すると考えられた。
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