研究概要 |
マンナン結合タンパク質(MBP)は異物の糖鎖を認識する補体レクチン経路の第一因子であり、自然免疫において重要な役割を果たす。今回、我々はSCG/Kjマウスの糸球体腎炎発症における補体レクチン経路の関与について調べる目的で、本経路の主要な因子であるマンナン結合タンパク質(MBP)およびC4の糸球体沈着を免疫組織染色により調べた。SCG/Kjマウスは血清MPO-ANCA陽性で半月対形成性糸球体腎炎を発症し、血管炎症候群のモデル動物である。8,12週齢のSCG/Kjマウスのほとんどにおいて尿タンパクが出現し、その後さらに増加し18週齢の一部で壊死・半月体形成を伴う疾患の進行した個体が見られた。この疾患活動性の高い個体では、糸球体毛細血管係蹄壁および壊死部に顕著かつglobalにL-MBPとC4の沈着が認められた。一方で若く疾患活動性の低い個体ではMBPとC4の沈着がより少なく、尿・血液所見および光顕所見による疾患活動性とMBPとC4の沈着は相関する傾向が見られた。これらの結果から、補体レクチン経路がSCG/Kjマウスの半月体形成性糸球体腎炎の炎症増悪および疾患活動性の促進に関与する可能性が示唆された。また、IgA腎症モデルであるHIGAマウスにおいては、LPS投与による炎症増悪に伴いL-MBPのメサンギウム領域への沈着の増加が認められ、IgA腎症においても補体レクチン経路が炎症増悪に関与することが示唆された。
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