1.非放射性in situ hybridization法 各種apoptosis関連蛋白であるBax、Bcl-2、caspase-3のoligonucleotide probeを用いて非放射性標識法によるin situ hybridization法を行った。今回のin situ hybridization法に使用したプローベの核酸配列はヒトBax、Bcl-2、caspase-3 mRNAからコンピュータホモロジー検索の結果、特異的と思われる領域の配列からアンチセンスプローベを作成し、digoxigenineで標識した。Bax、Bcl-2、caspase-3のmRNAの発現は、糸球体内では主に上皮細胞とメサンギウム細胞の一部にその発現が確認された。 2.非放射性in situ hybridization法の評価 各プローブのmRNAの発現の程度を定量化するため、それぞれの糸球体での総細胞数を数え、次に各種mRNAの陽性細胞数を数えて、総細胞数に対する陽性細胞数の百分率として評価した。 3.組織群間での比較 正常腎組織と糖尿病性腎症腎組織での比較では、糸球体内でのBax、Bcl-2、caspase-3のmRNAの発現に有意差は認められなかった。しかしながら、糖尿病性腎症群を糸球体メサンギウム基質の増加の軽度なDN1群と中等度以上のDN2群に分類し、正常腎組織との3群間で比較検討したところ、メサンギウム基質増加が大きいDN2群においてBcl-2陽性率、Bcl-2/Bax比に有意な低下を認めた 4.以上の結果からは、DNの糸球体内細胞におけるアポトーシスのメカニズムの経路には、Bcl-2 mRNA発現の低下がそのメカニズムの一部に関与している可能性が示唆された。 5.TUNEL陽性細胞の検出 apoptosis細胞を腎組織で検出するためTUNEL法を用いて検討した。その結果、糖尿病性腎症腎組織では尿細管細胞に陽性細胞が確認されたものの、糸球体内部において陽性細胞は確認されず更なる検討の必要性が示唆された。
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