1.2次元電気泳動を用いた抗原検索 ラットおよび正常ヒト脳のタンパク質を各々の可溶性で分画し、プロテインAビーズと共有結合させた多発性硬化症患者血清IgGと反応させ、血清IgGと特異的に反応した蛋白を2次元電気泳動法にて泳動し、銀染色を行った。染色スポットを患者と健常者との間で比較を行ったが、患者に特異的な共通した蛋白質は同定されなかった。 2.HEQ293培養細胞を用いた血清抗アクアポリン4(AQP4)抗体の同定 ヒトAQP4の全長cDNAを作成しプラスミドベクターに組み入れた後、HEQ293細胞に導入し培養増殖させた。8倍希釈した患者血清をAQP4発現HEQ293細胞に反応させ、間接蛍光抗体法にて血清中の抗AQP4抗体の有無を確認した。疑い例を含む多発性硬化症患者148例の血清において抗AQP4抗体の測定を行い、33例で抗AQP4抗体が陽性であった。33例はいずれも視神経脊髄型多発性硬化症あるいはそのハイリスク群であった。抗体価の経時的変化の検討において、治療後の抗AQP4抗体価の低下が一部の患者で認められ、再発時に抗体価が上昇することが確認された。 3.視神経脊髄型多発性硬化症における髄液ニューロフィラメントH鎖(NfH-SMI35)の定量 視神経脊髄型多発性硬化症24例、通常型多発性硬化症24例、再発性脊髄炎4例、および筋萎縮性側索硬化症9例の髄液中のリン酸化ニューロフィラメントH鎖(NfH-SMI35)レベルをELISA法にて測定した。髄液NfH-SMI35レベルは視神経脊髄型の25%(24例中6例)で異常高値であったのに対し、通常型および再発性脊髄炎の髄液NfH-SMI35レベルはすべて正常であった。視神経脊髄型における髄液NfH-SMI35レベルの異常頻度は通常型と比較して有意に高く、その平均値も著しく上昇していた。髄液NfH-SMI35レベルが異常高値の6例のEDSSの中央値は6.5で比較的障害の程度は重かったが視神経脊髄型全体において髄液NfH-SMI35レベルと重症度、罹病期間、再発頻度、髄液所見、MRI所見、などとの間には有意な相関は認められなかった。通常型との比較において、視神経脊髄型では軸索障害あるいは神経細胞死や軸索変性がより強く病態に関与していることが示唆される。
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